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インタビュー

管理栄養士/健康運動指導士:伊是名カエさん—食肉×文化

昔ながらの知恵と、外国との交流が生み出した、沖縄の食文化

沖 縄の長寿を支えてきた昔ながらの食生活とは、さつま芋を主食に、季節の野菜や海産物、島豆腐などを使い、豚肉はお正月や祝い事、法事など、行事でしか食べられないごちそうでした。
この食べるものが少ないゆえの貧しい食生活こそ、実は食物繊維やビタミンを豊富に摂れる健康的なスタイルだったのです。むしろ、日常的に肉や動物性脂肪を摂り過ぎなかったことが、長寿につながったのではないかと推測されます。

沖縄の伝統的な豚肉の調理法では、まず肉をブロックのまま下ゆですることから始まります。
これは昔、とても貴重だったラードを取り出すための知恵なのですが、長時間ゆでることで肉から余分な脂肪が落ちてヘルシーになり、一石二鳥の調理法になっています。物資が乏しかった沖縄では、食材を無駄なく使う工夫をこらし、肉をゆでた汁も、脂肪を取り除いた後に、だし汁として活用しました。現在では、脂肪分の多い三枚肉のゆで汁はさすがに捨てますが、骨付き肉のソーキ(あばら骨)いわゆるスペアリブを下ゆでするときは、豚の骨から良質なだしが出るので、ゆで汁は捨てずにだし汁として使います。
そして、昆布、かつおぶし、干し椎茸など、旨味成分が豊富なだし素材と豚肉を合わせることで、味付けが控えめで済み、その結果、塩分を摂り過ぎないようになっていることも沖縄料理の特長です。現代沖縄人のソウルフードともいわれる沖縄そばのだし汁も、豚の骨と昆布やかつおぶしの合わせだしを使っていますから、豚+昆布、かつおぶしという組み合わせは、今も昔も沖縄人が愛して止まないコンビネーションなんですね。

ハンダマ(水前寺菜)/ゴーヤー、ヘチマ、冬瓜/ンスナバー(ふだん草) さらに、大根、にんじん、島にんじん、冬瓜、ゴーヤー、ナーベーラー(ヘチマ)、ハンダマ(水前寺菜)、にが菜、からし菜、ンスナバー(ふだん草)、ウンチェー(空芯菜)などの野菜をふんだんに使う家庭料理は、漬け物を食べる習慣がない沖縄の人々の野菜不足を補う絶好のメニューです。昔ながらのイリチー(炒め煮)やンブシー(味噌煮)、チャンプルーなどは、季節の野菜を豚肉と組み合わせて調理することにより、肉や脂肪の旨味がコクとなって、奥深い美味しさを生み出しています。
とりわけ私は、じっくりと脂肪がとろけるほど煮込んだ豚肉やテビチ(豚足)を、大根やにんじん、こんにゃく、結び昆布などと合わせた、煮付けと呼ばれる料理は、栄養学的にも非常にすぐれた家庭料理だと思います。街中の食堂はもちろん、スーパーのおそうざい売場や市販のお弁当でも、今も年配の方を中心に幅広い世代から人気を集めていますし、私自身も大好きな料理です。

沖縄の食文化がもつ素晴らしさ、それは、こうした理にかなった調理法だけではありません。古くは琉球王朝時代、冊封使をもてなすための調理法を中国から学び、贅を尽くした宮廷料理が生まれ、その手法の一部はやがて民間へと広がり、今なお愛されている沖縄料理の中にも息づいています。また、戦後のアメリカ合衆国による統治時代には、ステーキやハンバーガー、フライドチキンやローストチキンといった洋食文化の波が一気に沖縄へ押し寄せ、日本の中でもいち早く食の欧米化が進んだだけではなく、たとえばビーチパーティでのバーベキューや、地元客や観光客で賑わうステーキ専門店のように、アメリカからもたらされた食のスタイルが定着し、今や沖縄を代表する名物にさえなっています。

伊是名カエさん(イメージ) 遠い昔から貿易の中継点として栄えてきた沖縄は、多くの国や人から文化を受け入れ、その長所を学び、自分たちのものにしてきました。その人間性の大きさ、心の広さが、今の沖縄の食文化を創り上げてきたに違いありません。沖縄の先人たちが持っていた、その豊かな精神性を、私はなによりも誇りに思うのです。

伊是名カエさんプロフィール

那覇市首里出身。管理栄養士、健康運動指導士。
1991年にヘルスプランニングカエを開設し、栄養相談や運動の指導にあたりながら、
伊是名カエクッキングスクールを通じ、沖縄の地元食材を使ったヘルシーな家庭料理を提案。
著作のレシピブックや各地での講演も人気。

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